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脳を鍛えるには運動しかない!

脳を鍛えるには運動しかない!  最新科学でわかった脳細胞の増やし方

脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方

  • 作者: ジョン J.レイティ,エリックヘイガーマン,John J. Ratey,Eric Hagerman,野中香方子
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2009/03/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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とかく運動というと、ダイエットを期待する健康増進の手段や、技術向上やゲームとしての楽しみとして語られることが多いが、運動が脳にあたえる好ましい影響について一般向けにわかりやすく説明した書き物は少ないと思う。いや皆無だったのではなかろうか。そんな私の勝手な思いこみの中、初めて目の前に登場したのが本書である。

書き出しはアメリカのある学業成績不振の高校の体育教師の試みから始まる。むやみに運動させるのではなく、生徒個々人にあったエクササイズを心拍計をツールに行なわせたのだ。私自身、小学生までは大好きだったスポーツが、中学の部活が影響して嫌いになってしまった。もちろん、かけがえのない経験もできて、指導してくれた先生や先輩、同級生には今でこそ大変感謝しているが、当時はとてもそんな気になれず、意義も見いだせず、早く部活から逃げ出したいばかりの不真面目な部員だった思う。

いまでもそんな生徒はいるだろう。ハードな部活までいかなくても、最低限課せられた体育の授業でも消極的になったり、見学や保健室に逃げ込んだりする生徒もいるのでは無かろうか。まだ球技など技術を要求するものはできませんで済むが、持久走などどうしてもしごきに近いモノになってしまう。いまどき根性が足らんと竹刀を振り回す体育教師がいるとは思えないが、能力差のあるなかでキツイ思いをして、結局運動嫌いになって卒業してしまう生徒も少なくないだろう。

心拍計を用いて適切な強度を設定すれば、ひーどい思いをする必要はなく、本書が説くように健康面だけでなく、脳にもたらす好影響ははかりしれないのである。具体的に上げれば先のアメリカの高校では各種学力テストの成績が〜の奇跡としてかたられたり、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥/多動性障害)の子供が落ち着きを取り戻したり、薬物依存の学生が獣医師そして社会復帰していく様など事例が抱負に取り上げられているだけでなく、それを裏付ける動物実験など脳の医学的な知見も細かく記されている。

われわれの遠くない祖先は、食料を求めて森や野原をひっきりなしに駆け回っていたハズである。大きな脳みそは、別に哲学するために発達した訳でなく、身体を動かして仲間と協調して狩りをしたり、四季にわたり餌場を正確に記憶しておくために巨大化したのではないか。自転車レースや朝練でスピードが乗ったときのどきどき感は、まさに野生の先祖の血が沸き立っている時だと思う。

しかし、本書を直接読んで問題を抱えるひとが、それを克服しようと運動を思い立つまでに至るだろうか?運動は身体によいとはわかっていても、いろいろ言い訳して動き出せない人たちは多いはずだ。私自身、小学生の頃、体育館でドッチボールをしてすっきりしてから受ける授業は確かに頭に入った気がするし。自転車に乗り始めて長距離乗るようになって、たばこへの依存は次第に薄れて禁煙に至ったがその渦中にあってこんな話を聞かせられたり、本を読んでもあーそうかで終わってしまうだろう。

だから、この本は多くの教師に読んでもらいたい。そして、子供たちに運動するって気持ちいい、楽しいという経験をたくさんさせて欲しい。結局、脳は気持ちよいことしか受け付けない。多少のストレスはあっても良いがそれは人生においてはスパイスでしかない。私が、もう一度大学に戻れるなら、体育教師になるべく勉強し直したいなと思わせる一冊であった。それにしても、タイトルの邦題がインチキ臭いなー。原題は、SPARK : The Revolutionary New Science of Exercise and the Brain.運動で脳をスパークさせようじゃありませんか!